2017.02.01 美しい距離
これは、新聞の書評を見たのが最初だったか
それとも、やっぱり ”books A to Z" のほうが先だったか…
忘れてしまいましたが、
出会い方は、まぁ、どちらでもいいですよね。

山崎ナオコーラさんの作品です。
ページ数、165ページなので、
もし、持ち歩くのだとしても、圧迫感のない1冊です。
その上、装丁がやんわりしたピンクなので、尚更かな。
そう、
桜の花をソフトフォーカスで撮ったらこんなかなぁと
思うような表紙なんです。

ただ。
そうしたのには、そうしたなりの理由があるかもしれません。
中身は、結構な重たさです。

語り手は保険会社に勤めている40代の男性です。
極々、普通の人。
そして、その奥さんも普通の人ではありますが… 癌を患っています。
作品は、その奥さんが、徐々に弱って亡くなっていく状況を
静かに静かに淡々と描いていきます。

子どもがいない夫婦の故か、
少女の部分をどこか残しているような印象の奥さんはでも
とても冷静です。
生きることを諦めてはいないけれど、
病気と闘うと言うようなスタンスではいない。
なるほど、こう言う過ごし方もあるんですね。

語り手は、介護休業制度という制度を使って
かなりの時間を奥さんと一緒に過ごす時間に割きます。
この辺、保険会社に勤務しているということと
無関係ではないかな。
周りの理解も、得られてかなり色々フォローして貰えている印象です。

この男性、かなり女性的な発想をする人のような気がします。
病人と言えども、やって貰ったらイヤだなと思うことはある。
普段は普通に交わされる会話でも、毒に感じることもある。
そういうことを、細々気を配るんですが、
それ… 男の人って不得意じゃないかなぁ…。
それとも、相手が愛する奥さんだったら、出来るのか?
そしてその気配りは、相手が奥さんだけに限らず、
奥さんのお父さん、お母さん。
奥さんの仕事仲間、奥さんのファンにも向けられます。
医療関係者に向けても。
この距離の取り方が絶妙です。こんなん出来る人、いるのかなぁ…。

ただし、そう言う気遣いができる人は逆に
人の言動にかなり敏感だったりするのが難点かも。
(私は気遣い出来ないのに、人の言動に傷つきやすい最悪の人だけどさ~)

どんどん衰弱していく奥さんを目の前にして、
取り乱すこともなく、穏やかに
自分の出来る限りのことを精一杯やる夫と
同じく、取り乱すことなく、
未来を諦めずに、でも、死を拒絶せず過ごす妻…。
恐らく、当事者になったら、こんな綺麗には過ごせないだろうけれど、
こんな風だったら… なぁ…

この作品は
「星が動いている。」
と言う言葉から始まります。
そして、最後も ”宇宙が膨張していることに” にチラリと触れて
最初と最後が呼応するようになってます。
最後に出てくる宇宙のことについては、
ただ単に物理的な宇宙のことについて語っているだけでは
ないけれど。

静かな作品ですが、
読み終わると、頭の中が色んなことでグルグルしました。
只今、頭の中大暴風注意報発令中。


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