2016.12.02 ツバキ文具店
小川糸さんの小説です。
何か賞を獲られていたような気もしたんですが、違うみたい… かな?

古都鎌倉が舞台ですね。
そこで、由緒正しい(?)文具屋さんを営む鳩子さんが主人公です。
基本は、文房具屋さんなんですが、代書屋さんもやっています。
それは、先代の店主であるおばあちゃんもやっていたことで
そのあとを継いだ形をとっているんです。

代書って、ただ、手紙を代わりに書いてあげるだけなのかと思ってましたが、
違うんですね。
依頼人に代わって、文章も何もかもひっくるめて手紙をしたためるようです。
え゛ーーーーーーっ!!
文章ごと、他人に丸投げ???? 私信を????????
ちょっと私には… 分からない感覚ですが、
あり… なんでしょう。たぶん。

あ、そう。内容でした。

代書を依頼してくるお客さんやら、お隣さんやらとの
穏やかで優しい関係の中での、鳩子さんの日常が綴られていきます。
たおやかな、たおやかな物語です。

自分のおばあちゃんのことを、”先代”と呼ぶ鳩子さん。
一時は、ヤンキーまがいだったこともある鳩子さん。
放浪の旅に出て、先代の死に目に会えなかった鳩子さん。
でも、先代の ”教え” はしっかり鳩子さんの中に生きていたりして。

人は誰でも多かれ少なかれ、心に傷を負っているものですが
主人公の鳩子さんも例外ではありません。
そして、心の傷は、まぁ、新しいものが常に出来るのだとしても、
人とのかかわり合いや、時間がそっと癒してくれるものだったりもして
これもまた、鳩子さんも例外ではありません。
代書屋と言うお仕事が、その癒しの手伝いもやってくれているかな…。
この本の中、一番最後に
鳩子さんが自分の字でおばあちゃんに手紙を書いているんですが
とってもいいです。

人って、実は自分が思っている以上に
誰かには大切に思われているものでしょうか…
そうだったらいい、そうだったらいいな…
孤独の痛さに焼き切れなくてもいいものなのかな…
ふと、そんなことをぼんやり思ったりしています。

それにしても。
鎌倉という地名には、なんと言うか、”色” があるんでしょうか。
鎌倉と言う名詞だけで思い浮かべる雰囲気と言うか、そういうもの。
京都のような、華やかなお公家さん文化じゃなく、
質実剛健を旨とする、遠いお武家さんの文化を土台とした気質が
なんかこう… 空気の中に生き残っている感じ?
静かで落ち着いた生活の匂いがするような気がします。
『海街diary』しかり、『ビブリア古書堂の事件手帖』しかり。
その何とも言えない静かな風景をスケッチしたかのような描写も
所々この作品には出てきていて、
それがまた、とっても素敵だったりします。
例えば
 波は、夜に子守唄を口ずさむような優しさで、ゆっくりゆっくり
 体をさするように浜辺を撫でる。
とか。
あまりだすと、盗用になっちゃうかもなのでやめておきますが。

苛烈な夏から始まって、優しい春に終わる約1年弱の物語ですが
心穏やかになります。
ホッとしたい人には、超が付くくらいお薦めかな。

メールやラインやSNSが幅を利かせるこの時代、
葉書や手紙なんて、前時代の物のように感じますが、
やっぱり、たとえ綺麗な手跡(て)でなくても、
手書き文字の温かさと言うものはあるように思います。
”手紙は、送り手が送られる人のことを思っていた時間。
 現代では、もっとも高価な贈り物”
と仰ったのは、お師匠さまで、だから私もそれを鵜呑みにしてますが
人さまがそうは思わないであろうことも分かっています。
分かっていても、誰かにお手紙送りたくなるような作品です。

すぅ~~~~~~っ はぁ~~~~~~~~
思わず、枯れ葉色の風を深呼吸・・・



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