もうお馴染になりましたか ”books A to Z” で紹介されていた1冊で、
長嶋有さんの小説です。

1966年から現在に至るまで第一藤岡荘の5号室に住んだ人たちの暮らしを
淡々と綴っていく、という形をとっています。
これだと普通は、1番最初の人は、こういう性格で、こういう事情で
こんな風に暮らして、やがて引っ越していきました。
で、2番目の人は… 云々 って書き方をしそうですが
この小説はさにあらず。
テーマで括って、時系列で語って行くので、
時間があっちへ行ったりこっちへ行ったりします。
これだと、登場人物(13人も住人が変わってる!)がごっちゃになりがちですが
ならない。
それは、名前にからくりがあるからで
この名前で、この順番で住みつくってありえないだろ~よ、と
ツッコミ入れたくなるんですが、
その名前にかなり助けられるので、文句が言えないと言う…(笑)

住み始めて直後か、住む前の下見の段階で
誰もが思う、”この部屋の間取り、変わってるなぁ” 。
そこを出発点にして、台所のシンクのことだとか
風邪っぴきのことだとか、タクシーのこととか、
テレビのこととか、それぞれの住人の暮らしっぷりが次々と描写され、
それが時間という糸で縫い合わされたパッチワークのように
時代の模様になって行くんですよね。
1966年… 私すら生まれてない頃から
現在に至るまでって、色んな意味で激変の時代ですよね。
それを住人の背景で描いていくことで
もうね~、一大昭和史ですよ。
あ、途中からは思いっきり平成になるわけですけどね?

散らばる ”風景” をあっちこっち飛びながら思い出してるのは、
たぶん、藤岡荘自身。
八百万の神が住む国に生まれ育ってるので
建物が住人を見てると言う感覚に、まったく違和感感じません。
まだ終わっていない(取り壊されたりしていない)藤岡荘は、
今現在住んでいる諸木十三を見つめながら、
また、過去に自分に暮らしていた人をランダムに思い出して
時を過ごしていくんだろうなぁ。

劇的なことは起こらないけれど、
普通の人が、それなりに精いっぱい生きている小説です。
人間を愛おしむ小説、かな。


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