グイード・スガルドリさん作の児童書です。
しっかし…
『23分間の奇跡』も児童書だと思われますが、
児童書って… なかなか辛辣な内容だったりするんですね…。
この本も、皮肉が利いています。

表紙カバーの折り返しのところに
”立派な兵士になるための9条”が書いてあって
勿論それは物語の中でも出てきます。
その9条は、読んで「あぁ、さもありなん。」って内容のもので
軍隊というものをよく表しているなぁと思うんです。
が・・・。

主人公のカスパールは”立派な兵士”になるべく、
軍から渡された立派な兵士の心得とも言える”お約束”を実行中。
ある日、そんなカスパールに特別任務が下ります。
山の上にある風車小屋の監視を一人でするように、と。
決して誰も近付けてはならない、と。

カスパールは張り切って任に着きます。
そして、愚直に任務を遂行します。
まぁ、かなりおまぬけな監視だったりして読み手は苦笑いしちゃうんですが。

そして、そのカスパールのもとに毎日食べ物や飲み物を持ってやってくる
おじいさんとその飼い牛のももちゃんが現れます。
命令によれば、小屋には誰も近付けてはいけないので
最初、カスパールもそうするんですが、毎日やって来るし、
害意はなさそうなので、だんだん仲良くなってしまうという… ^^;;;;

そんなある日、街が攻撃されるという事件が起きます。
建物は壊され、兵隊のみならず、一般人の人たちも捕虜にされて
どこかへと連れ去られてしまいます。
その様子を逐一知りながらも、監視の命令を解かれていないので
カスパールは、その状態をなんとかしには行けません。
確かに、一人じゃ何もできないだろうし、彼の任務は小屋の監視だけどさぁ…。

そんなカスパールに対し、気のいいおじいさんのほうは、義憤に駆られ
敵に一矢報いようと、山を下りていきます。
(実はこのおじいさんのバックグラウンドも相当気になるところ!
 物語中には一切触れられないんですが、こちらだけでも1冊になりそう…)
う? うーーーーーーーーーん??
カスパールよ、それでいいんかい!?

上官の命令は絶対で、疑うことなく従うのが軍隊。
下された命令は絶対で、何があっても死守するというのが軍隊。
で、カスパールはそうしてるわけなんですが、
真面目にやろうとすればやろうとするほど滑稽になっていくんですね。
”おもろうて やがてかなしき ・・・ ” です。
でも、それを笑えるか? と聞かれると、答えに詰まります。

だって
日本が敗戦したことを知らずに、というか、信じずに
上官から言い渡されたように、ジャングルに身をひそめて生きていた日本兵、
結構いらっしゃいましたよね?
戦後、何十年も経ってから、わざわざその時上官だった人を連れてきて、
「戦争は終わった、もう、ここでの任を解く。」
と言ってもらって、ようやく姿を現したってことも実際あったことですよね?

現在の日本に生きる私にしてみると、それはかなり奇異なことなんですが、
思想統制の恐ろしさ、それがまかり通った時代があったという事実。
考えてはいけない、疑問を持ってはいけない、感じてはいけない
本来縛れないはずの人の心を縛ろうとするこのルールが
二度とのさばることがないようにしないといけません。

物語は、ほんのりとした可笑しさとともに淡々と進み、淡々と終わっていくんですが、
胸には苦さが残ります。
終戦記念の8月に読むにはふさわしい1冊だと思います。


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