2015.07.19 紙の動物園
近頃、こちらのソースをかなり利用しちゃってますが
”books A to Z”
で紹介されていた ケン・リュウさんの短編集です。
表題作の『紙の動物園』を含め
『もののあわれ』、『月へ』、『結縄』、『太平洋横断海底トンネル小史』
『潮汐』、『選抜宇宙種族の本づくりの習性』、『心智五行』
『どこかまったく別な場所でトナカイの大群が』、『円弧』、『波』
『1ビットのエラー』、『愛のアルゴリズム』、『文字占い師』、『良い狩りを』
の15編が収録されています。

この1冊をジャンルでくくるなら、SFと言うことになるのかな。
でも、クラークとか、アシモフとか、ハインラインなんかの作品を思い浮かべると
それとは、少し、色合いが違うように思えます。
作者さんは、中国生まれ。(現在はアメリカ在住らしい)
だからなのか、作品の根底をなす価値観と言うか、世界観と言うかが
オリエンタルの香りがします。

西洋から東洋を見ると、こんな風に見えるのか~と
そんな風にも読めます。
初めての感覚だなぁ、こういうのは。
改めて、自分は、Asianなんだなぁと思わせられます…

残虐で、自分勝手で、ホント、どうしようもない ”人間” と言う種族
ではあるんですが、
それもまたよし。 仕方ないじゃん、だって、そういうものなんだもん。
って、思わせてくれるかなぁ、少しだけだけどね。

”豊か” という言葉の意味も、ちょっと立ち止まって再考したくなるかも。
もっともこれは、東洋人ならではの感覚のズレかもしれないけど。

発想がかっとんでて面白かったのは
『選抜宇宙種族の本づくりの習性』。
”伝えること” に重点を置いたこの作品。
その方法のバラエティーさが舌巻きながらも微笑を誘います。

『結縄』や『良い狩りを』は、なんとも耳に痛いお話で。
現代の生活に至るその道筋をチクリです。

物悲しいけれど、FTの色合いが強かったのは
『紙の動物園』。
もう、語り手のママの孤独が心に痛い作品でした。
肉体的な痛さもそりゃつらいけれど、
精神的な痛みは治しようがないだけに
読み手は切なくて、なんともやるせない… (TOT)

『心智五行』は好きな作品。
これこそ、西洋的なもの、東洋的なものを感じさせてくれる作品です。
どちらが正しいとか、そう言うことじゃなく
ただ、あぁ、発想の根幹がそも違うんだなぁとしみじみ思います。
違うものなんだから、無理やり合わせなくてよかったのに。
なんてことも考えたり…。

『文字占い師』。
この作品集の中で、私には最も衝撃的でした。
作品中占われる ”文字” が明るく、優しいものであればあるほど
その対比としての物語の筋立てが暗く呪わしく感じます。
もう… 酷い。 
ありったけの希望を夢見せておいて、残酷な現実オチだなんて。
語り手の女の子は、決して癒すことの出来ない心の傷を抱いて
ずっと生きていかなくちゃならない。
どう生きていくのか、非常に気がかりです。

色彩的には、決して明るい1冊ではないけれども、
いつもとはちょっと違ったSFをお求めの方には、いいかも。


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