荻原規子さんの今年2月に発売された作品です。
ん~。さもありなん。
東日本大震災以降、あちこちで強い地震や火山の噴火
それから、水の災害も起きている今日この頃の日本。
それを地中におわす竜によるもの…と連想しますよね、確かに。
恐らく、そんな感覚をベースに書かれた作品です。

勾玉シリーズには分類されないけれど、
その流れをくむ『風塵秘抄』。
この作品は、その『風塵秘抄』の主役だった2人、
草十郎と糸世を重要な役どころに据えた
まだうら若き源頼朝を主役公にした物語でした。

後々、鎌倉幕府を開いた源頼朝。
政治的駆け引きのセンスは持ち合わせていても
戦は絶望的なセンスの持ち主でしたね。
天才的な戦の才を持つ腹違いの弟、源義経を追い詰め、
その命を絶ってしまったことでも有名かな。
冷徹な人、としてね。

でも、それは、この物語のずっとずっとずっと後の出来事。
若い頼朝は、どこかひ弱な感じを漂わせ、
自分自身を諦めてしまっている寂しい少年です。
反逆者として(ホント、歴史は勝者のものよね。勝てば官軍)
蔑まれ、侮られ、寂しい無聊な日々を送っています。

話が動くのは、その頼朝の身を預かっていた伊東の領主の急死から。
その死が、頼朝の呪われた存在によるものなのでは?と
にわかに、頼朝処刑の話が持ち上がります。
でも、頼朝が後に坂東武者を従え、鎌倉の地に幕府を開くことは
決められた日本の歴史。
ここで、頼朝が処刑なんてされようものなら、時の流れが変わってしまう。
では、時の流れを守るためには???

そこで登場するのが… です。
時と空間を捻じ曲げてしまったのは、自分たちだという自覚がある2人。
さぁ、歴史を守りきることは出来るのか?
そんな時間的背景を縦糸に
頼朝の変化と成長を横糸に物語は織り上がって行きます。

『古事記』が大らかで度派手な色合いをまとうように
『空色勾玉』は、それに寄り添うような匂いがします。

時代が下がって、『風塵秘抄』は、勾玉三部作のぬくもりと肌触りを
裏切るかのような、ちょっとひんやりすべっとした雰囲気でした。

そして、この『あまねく神竜住まう国』は、
月の色とか、燃え盛る火の色とか、そういう色の表現が
いくつも出て来るのに、どこかモノクロ的な、
色彩を抑えた物語に見えました。

結構派手派手しく、場面も展開するし、
頼朝もいくつも命の危険をかいくぐるんですが、
どこか淡々としたイメージが付きまといます。
(なぜだろう?????????????)

だけど、不思議に魅力的です。
頼朝が、どんな風にして人の信頼を得ていったのか
(最初は流罪人だとバカにされているのに)
とても自然な流れです。
最初、なんとなく厭世的で、世捨て人めいていた頼朝が
最後、少し逞しくなって、表情豊かに明るくなったのが
違和感なく納得できます。

と同時に、実弟を追討させたり
病気で急死してしまったり、源の血筋がたった3代しかもたず、
しかも同族で殺し合う運命だと知っているだけに
何とも言えない気持にもなっちゃうんですが。^^;;;;;

草十郎と糸世があの後どうなったのか、
懐かしい2人に会える作品です。
『風塵秘抄』をお気に召した方には、お勧めの1作です。


ところで、ねぇ?
やっぱり、神の化身たる竜はいまだ健在で
まだまだ時々は身じろぎなさりそうですよ?
うぁ~~~。剣呑!


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