窪美澄さんの短編集です。
収録されているのは、
「ちらめくポーチェラカ」「サボテンの咆哮」
「ゲンノショウコ」「砂のないテラリウム」
「かそけきサンカヨウ」
の5編。すべてに植物関係の言葉が入ってますね。
ま、そっか。
タイトルに”水やり”って入ってるんですもんね。

さて。と。

この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の
欠けたることの なしと思へば

有名すぎる藤原道長の短歌ですが…
人間、こんな風に「あぁ、完璧に幸せ!!」ってなことは
まず、ないですよね。
(もっとも、こう詠ったとは言え、幸せだったとは限りませんが)
この本に収録されている5編は、
満月に少し欠けるような幸せ、もしくは、不幸せを描いています。

うん。共感できる。

「・・・ポーチェラカ」は、昔いじめに遭ったことで
今でも、ママ友との付き合いが怖くて仕方ない若いママの話。
嫌われないように完全武装するも…???

「サボテン・・・」は、産後鬱になってしまった奥さんを持つ
まだ若いパパが、奥さんとその両親に振り回される話。

「ゲンノショウコ」は、軽度の知的障害児を妹に持つ女性が
自分の娘にもその傾向があるんじゃないかと怯える話。

「・・・テラリウム」は、同棲→妊娠→結婚&出産と進んだ2人。
女の子は母親になったけれど、
男の子のほうは父親になりきれなくて… と言う話。

「・・・サンカヨウ」は、唯一高校生の女の子が主人公で
そのせいか、ちょっと他の4編とは雰囲気が違います。

どれも、家族について書かれたものですね。
どこにでもありそうな、ありふれた悩み、迷い。
でも、だからこそ、共感度が高いかな。
当の本人にとっては、それぞれ大問題ではありますが、
だからと言って、決定的な絶望はありません。
それぞれの話には、うっすらと光が差しこんでくるような
そんなラストも用意されています。
ただ…
光はうっすらです。
絶対の絶望もない代わりに、完璧な救済もありません。
その辺、リアルで、絶妙なさじ加減です。

それにしても。
上手いタイトルですね。
最初の話を読んでも、また、それぞれの話を読んでも
植物関係のタイトルを冠しているとは言え
すぐにピンとはこないんですが、
全部読み終わって、ふと、振り返ってみると
なんとなく、感じ取れるものがあります。

読後、余韻があります。 ^^

迷える仔羊にお勧めかな。
解決方法は書いてないけれど、
迷っているのは自分だけじゃないな~と
ちょっと元気が出ると思います。



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