2015.02.17 誘拐
本田靖春さんの書かれたノン・フィクションです。
”吉展ちゃん事件”を扱った内容なんですが…。
「吉展ちゃん事件」って、ご存知でしょうか???
今となってはもう、かなり古い事件の一つです。
なんせ、東京オリンピックの前の年に起きた事件ですから…

私ですら生まれてない頃の事件ですが、
ドキュメンタリー風ドラマの放送があって、事件を知りました。
実際の脅迫電話の音声も放送中に流れたんですが、
どこかやっぱり”本物”の持つ迫力があったのか
聞いたとたん、その恐ろしさにおののきました。
ホントに怖かった。

でも、この本は、その事件のことだけを取り扱っているのではなく、
事ここに至るまでのことも、丁寧に記してあります。
ドラマ放送時にはあまりに幼かった私は
ただただ犯人の小原保が極悪人で怖い人にしか思えませんでしたが
本書では、悪いばかりに描かれてはいません。
いや、寧ろ… です。
ふと、過日感想を書いた『オリンピックの身代金』を思い出します。

あの時代に、あの場所で、あの家族に生まれなかったら…
歴史に”If”はあり得ないとは言え、ちょっと想像するに
彼は、犯罪人にはならなかったんじゃなかろうかと思わずにいられません。
足は不自由だったし、学校もまともに通えなかった。
コンプレックスはたくさんあったし、怠け心もちょっとあった。
そして、山っ気もあった。
でもそれは、並み外れたものじゃなく、普通の範囲内のように思えました。
良心が欠如していると言うような人間的な欠陥には思えない程度。

頭の回転は速かったし、
度胸も必要な時にはあったでしょう。
何かをやり遂げると言う根性もあったのに
その能力の使い方を誤った。

道を踏み外してしまうんですね…。
たぶん、人並みの幸せが欲しかっただけ。
だけど、その方法を大きく間違えてしまった。
起こした事件は、極悪非道そのものだけれども
彼が根っからの腐れ外道だとは思えない。
吉展ちゃんの事件について自供した後の
憑き物が落ちたかのような彼の様子を本の中に見ると
何とも言えない、やりきれない気持ちになります。

弱かったのだ。 と
切り捨てるには、あまりに気の毒。
日本が戦後復興していく最中の歪を押し付けられ
踏みつけにされたそんな存在の一人。
勿論、不遇だった人がすべて犯罪に走るわけじゃ
ないだろうけれど、
日本の隠しておきたい部分に押しつぶされた犠牲者の一人
であることは、間違いない気がします。

とは言え、あまりに幼く、あまりに純粋無垢な存在であった
吉展ちゃんの命が、理不尽に奪われていい筈もありません。
もう、私は、何をどう感じていいのやら分からない………

こういうたくさんの犠牲の上で、私たちは生きている…
なんか、非常に罪深いことのように思えてきました…。




かなしい




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