川名壮志さん著作のノンフィクションです。
これも…、すみません。books a to zからです。^^;
初版は2014年3月なので、凡そ1年前ですね。
その時点で著者紹介に「新聞記者」とあるので、
恐らく現在も現役の新聞記者さんであろうと思われます。

と、それを踏まえて。

覚えておられるでしょうか?
「佐世保小6同級生殺害事件」。
被害者の女の子のお父さんが、新聞社の方で
事件当日に会見を開かれたのが
非常に印象的だったのを覚えています。
事件的にも衝撃的でしたし…。
(衝撃的でない事件ってなかなかなくなりました…)

著者は、その会見を即座に開かれたお父さんの部下の方。
被害者の女の子のこともよくご存知でした。
その方が書かれる事件のノンフィクションです。
身内じゃない。けど、単に知り合いと言うよりも
親しい関係だった川名さんの立ち位置は何とも言えません。
その、何とも微妙な視点から書かれた本書はでも
新聞記者と言う仕事柄もあってか文章がとても読みやすいんです。

事実関係を伝えるだけのドライなものでなく、
かと言って、涙に流されない。
そういうバランスの上に成り立っているように見えます。

事件が起きると、人は「何故、こういう事件が起きたのか?」と
その原因探しに躍起になるけれども、
(同じ轍を踏まないようにしなければならないしね)
こんな、やりきれないような事件こそその答えがない。
と言うようなくだりは、重く響きます。
そうですよね…
精神的な欠損は、なにも育った環境にだけ由来するもんじゃないですよ。
確かに。
生まれながらに持ち合わせていない場合だってきっとある。
生まれながらに肉体的に欠損している子どもが生まれるのと一緒です。
でも、それが凄惨な事件の加害者になりうる。
やり切れません………

加害者の女の子のことは、本書では厚生施設へ入所した
と言うところまでで、消息が途絶えます。
でも、第2部では、その後の被害者のお父さん、
加害者のお父さん、
そして、被害者の下のお兄ちゃんへのインタビューの内容が
まとめてあります。
悲痛です。もう、どちらの立場であっても、悲痛と言う言葉しか
私には見つからない。

中でも、辛かっただろうなと思えてしまったのは
当時まだ14歳だったお兄ちゃん…
確かに,殺害現場に居合わせてしまった子どもたちの精神的ケアは
必要だったでしょうが、
仲の良かった妹をかなり異常な状態で、突然亡くしてしまったお兄ちゃんが
精神的ケアのバックアップの手の間からこぼれおちたような状態に
なってしまったのは、痛恨のミス…。
妹から色々相談も受けていただけに、余計に辛かったでしょうね。
自分だけが知っていたと、大人に相談を持ちかけるべきだったと
後悔が…。
でも、もし、相談していたとしたら、妹からの信頼を失い、
兄を信頼しなくなった妹は、今度こそ誰も信用できなくなって
もっと苦しい状態に陥った可能性もあったはずで、
相談事を大人に黙っていたお兄ちゃんはたぶん正しかったのだと
私には思えるのですけどね。

加害者のお父さんの話は
事件当時に作り上げられた父親像とちょっと違っていて
報道の勢いの怖さを垣間見ます。
ワンマンで、厳しく、
子どもの唯一の楽しみだったバスケットボールを
勉強の邪魔になるからと取り上げてしまうような父親。
と言うのが、当時の私の抱いたイメージでしたが、
事実は全然そうじゃなかったんですね。
確かにバスケットは辞めさせたけど、それは勉強に重きを置いたのではなく
灯りの乏しい3kmもある山道を1人ボッチで帰る危険を冒さないため。
何とも普通ですよね。
宿題もやらずにバスケに明け暮れたなら、お小言の1つや2つ言います。
これも、ごく普通。

でも、普通の家庭に育った普通に見える子が
大それた事件を起こすと言うのは、怖いんです。
自分の家でも、すぐ明日にでも起きそうで。
だから、免罪符を求めるように、育て方が悪かったのだと
原因をそこに押し付けたくなるんだなぁと
その危うさ・狡さに慄然とします。

タイトルは、お兄ちゃんの口からこぼれたひと言を
そのまま使っています。
この言葉に含まれる複雑すぎるものは、
一体どうしたらいいのか…

答えはありません・・・・・・・・・・・



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