正直、日本国大使館のシェフのドラマを見なかったら
もしかしたら、読まなかったかもしれない書籍です。
不特定多数の顔も見えないお客さんに対して、
分業制で料理を提供するのではなく
食べる人のことをイメージしながら
一から十まで作ると言う点に共通するところがあるかなぁ、
なんて、興味がわいちゃったからこそ、手に取った1冊なので。

元・出張料理人の狐野扶実子さんの書かれた体験談です。
出張料理人と言うのは、固定のレストランとか、固定の個人宅で
雇われたシェフじゃなく、
依頼があれば、その都度、その都度、依頼された場所へ赴き、
料理をしてくれるシェフ。
たとえば、ホーム・パーティーを開くのに、料理を作りに来てほしいと
依頼があれば、そのパーティー用の料理を会場近くでしてくれる…
そういうお仕事の料理人さん。

そうだなぁ、たぶん、一期一会のお仕事です。
(お気に入りになって、何度も仕事を頼むとしても、ね。)
お茶の世界観ですね、ちょっと素敵でしょ?

この書籍を知ったのは 「books A to Z」 で、なんですが、
知ったときには面白そうでも、手に取る予定じゃなかったんです。
だって… 出張料理人さんが書かれる内容は
私にはきっと分からないだろうと思ったから…
(な、なのに、手に取っちゃった… ^^;;;;; ミーハーだなぁ、私)

しかして、予感的中…。
フランス料理の修行をされた著者の狐野扶実子さんの扱われる単語が
あちこちピンとこない…
料理教室に通ったこともなければ、パーティーみたいな場所に
出席する機会もなく、
外食もほとんどしないとなれば、当然だったりするのですけど、
この本を読むにあたっては、結構、「あいたた…」であったりします。

とは言え、力一杯!精一杯!頑張っている人の体験談が
面白くないわけはない。
狐野さんのお客さんはワールドワイドなので、
やっていることは、お料理なのだけれど、
その料理のスケール感がなんとも言えません!
拠点はフランスだけれども、ギリシアに出向いたり、
海を渡って、アメリカやカナダでお仕事なさったりしてます。
あり合わせのもので、ささっと料理が作れるようになれば上級者
なんて言いますが、
その土地で、その季節に旬のものを織り込んで
メニューに仕立てていくその発想力がものすごい。

料理人は実用的なアーティストさんなんだなぁとまざまざ思い知らされます。
味覚は言うに及ばず、視覚、嗅覚、聴覚、触覚
すべてで楽しむ究極のアートなんですねぇ。

あぁ、でも、「切ない料理」と言う章では
目と耳が不自由なゲストをお迎えしてましたけども。
そのときはそのときで、おもてなし力、フル稼働って感じでした。

本全体を読み終わって、
”おもてなし”とか、”ごちそうする”という言葉について
思いを馳せています。
料理はアートだと、先に書きましたが
必ずしも、エンターテイメントである必要はない気もしています。
心意気は目には見えないものだし、
人によっては、無駄なものだと言う意見もありますが、
超一流のものでなくても、感じ取れる何かが
あるんじゃないかな、なんて。

いやいや、狐野さんの料理にケチをつける気は毛頭ありません。
丁寧に、丹念に作り上げられた料理は
食べる人のことを十二分に考えた素敵な料理であろうことは
想像できますから。
”料理の中には狐野さんがちゃんといる” のような意味合いのことを
お客さまから言われているシーンもありましたし。
でも、だからこそ、ホストが料理の中にいなくていいのかなぁと
ちらりと、ね。 頭をかすめたわけです。

それにしても。
恐ろしく柔軟な発想力と言い、超人的な精神力と言い、
プロとは言え、驚きます。
あの~
狐野さん、まさか、信太の森出身なんてことは…
ないですよね、あはは。




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