只今、『借りぐらしのアリエッティ』が公開中で、
アリエッティも小人のお話ですが、
タイトルの本もそうです。

但し、『・・・アリエッティ』はメアリー・ノートンさんと言う
イギリスの作家さんが書かれているのに対し、
こちらは、いぬいとみこさんと言う日本の方が書かれていて、
たぶん、物語が持っているトーンは大分違うと思われます。

『木かげ・・・』、児童書なんですが、中々重たい内容です。
舞台設定が、太平洋戦争ですから、
重たくならざるを得ないと言えば、そうなんですけどね。

本編に入る前にプロローグの章があるんですが、
この段階で、いぬいさんの文章に惹き付けられます。
冒頭部が
人はそれぞれこの地上のどこかに「だれにもゆけない土地」を持っています。
その人自身のいちばんたいせつな、愛するものの住んでいる「ふしぎな土地」を。

ですよ。
もうこの最初を飾る2行で、好きにならずにいられましょうか!!

さて、内容に入っていきましょうかね♪

小人たち(アッシュ家の4人)と
人間たち(森山家の5人)との絆の物語。
と、一言で言えばそうなっちゃうんですが、
時代背景が非常時である戦争中なので、
物語に深刻さが加わります。

人間たちは、毎日たったグラス一杯のミルクを
小人たちのために用意するんですが、
用意したからと言って、特別なことが起きるわけでも
願い事が叶うわけでもありません。
それどころか、そのことが森山家の人々を苦しめてしまいます。
しかも、
止むに止まれず、どうしても用意できなかったミルク故に
小人たちが森山から離れてしまうという事態になったり。
(イメージ的には、森山を捨てていく感じ…)

森山家の家族は5人なんですが、
戦争は愚かなことだと公言するお父さんは、
その思想ゆえに投獄。
お母さんは、そのお父さんに差し入れしたり
しなければならないので、東京を離れられず。
上のお兄ちゃんは、戦況を正確に把握しながら、
軍隊に配属されることを余儀なくされ。
下のお兄ちゃんは、愛国主義、軍国主義に走り。
末っ子の女の子は、病弱にも拘らず親元を一人はなれ
”守るべき小人たち”とともに疎開せねばならず。
一家離散とは、まさにこのこと…。

自由と勝手を履き違えがちな昨今だけれど、
自分が好きなものを好きだと
大切なものを大切だと
間違っていると思うものを間違っていると
公言出来る世の中はいいですよね、やっぱり。

殺したくもない人を手に掛けないで済む世の中は
やっぱりいいです。

時代と言う言葉で片付けるべきではないけれど、
個人の力じゃどうにもならないことは、やっぱりある…。
そして、一度うねってしまった時間の流れが
どうやって人の心を捻じ曲げ、麻痺させてしまうのかも
この物語の中、目の当たりにします。
分かりやすい例として
森山家の次男のその目つきが変わっていく過程がリアルです。

戦争はいけない、間違っている。
そんなことは、分かってます。
でも、ふと、自分のことを考えちゃいます。
私の心は弱く、染まりやすい。
もし、このままの私で、あの時代に生きていたとしたら、
私は、確実に軍国少女、もしくは、軍国夫人(なんて言い方あった?)
だったと思うんですよね…。
鬼畜米英と教われば、それを鵜呑みにした。
自分の家族が戦死した場合には、その憎しみに我を忘れ、
戦況を正確に把握している人たちを、非国民と罵っただろうし、
体が弱くて、とか、障害があって戦地に行かれない若者を
やっぱりお荷物扱いしたと思うんですよね。
その思想ゆえに投獄された人の家族は国賊呼ばわりしたと思うし、
毛嫌いしたと思うんです。

そういう自分がとても恐ろしい…。
そんなことを実感する物語でした。
他にも、書いておきたいことは多々あるんですが、
やたら長くなっちゃうので、
一番のキモだけにとどめておくことにします。





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